[相談]
私は税理士となることを目指して、現在、相続税法を勉強中です。
その勉強の中で、相続税法の中に、「皇位とともに皇嗣が受けた物については、相続税の課税価格に算入しない。」という条文があることを知りました。
一方で、贈与税についてはそのような条文が見当たらないことから、今年5月1日の皇位継承について、「皇位とともに皇嗣が受けた物」がどのように取り扱われるのかを知りたいです。教えてください。
[回答]
ご相談の「皇位とともに皇嗣が受けた物」については、相続税法ではなく、皇室典範特例法によって、贈与税は非課税とすることが定められています。
[解説]
1. 相続税の非課税財産
相続税法は「相続」と「贈与」に関する税金について定めた法律です。
その相続税法では、皇室経済法の規定により、皇位とともに皇嗣が受けた物(皇位とともに伝わるべき由緒ある物)については、相続税を課さない(非課税)とすることが定められています。
なお、上記の「皇位とともに伝わるべき由緒ある物」とは、宮内庁によれば、「三種の神器(鏡・剣・璽)・宮中三殿(賢所・皇霊殿・神殿)のように皇位とともに承継されるべき由緒ある物」であるとされています。
このように、相続税法では「皇位とともに伝わるべき由緒ある物」について、「相続税」は非課税とすることが定められていますが、「贈与税」がどのように取り扱われるかについては、規定が存在していませんでした。
2. 特例法の内容
上記1.の贈与税の取扱いについて、政府が有識者会議を開いて議論を行った結果、「退位に伴う場合であっても、皇位継承に伴う由緒物の承継であることには変わりはないことから、相続の場合と同様に由緒物に対する贈与税も非課税とすることが適当である」という最終報告が出されました。
その報告を受けた後に成立・交付された「皇室典範特例法」によって、今回の皇位継承で皇位とともに皇嗣が受けた物については、贈与税を課さないとすることが定められたのです。
なお、特例法によって贈与税を課さないこととされた物については、相続税法上の生前贈与加算の規定も適用されないこととされています。
[参考]
相法9、12、19、皇室経済法7、天皇の退位等に関する皇室典範特例法附則7、宮内庁ホームページ、天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議最終報告(平成29年4月21日)など
本情報の転載および著作権法に定められた条件以外の複製等を禁じます。